まず質問です。
農家は何業? ――農業。
自動車メーカーは? ――製造業。
スーパーは? ――サービス業(卸売業)。
じゃあ、学習塾は何業?
答えは――サービス業(教育・学習支援業)。
これ、統計上はちゃんとそう分類されてる。
つまり俺たちは、ホテルやレストランと同じく“サービス業”の仲間なんです。
……が、ここからがややこしい。
レストランやホテルの接客と似てはいるけれど、
決定的に違うのは、支払う人とサービスを受ける人が違うということ。
そう。
お金を払うのは保護者で、
実際に“サービス”を受けるのは生徒。
――ここが、塾という商売の一番難しいところだ。
生徒にとって俺たちは“先生”。
でも保護者にとって俺たちは“サービス提供者”。
つまり、立場が二重なんです。
けどな、俺たちは店員じゃない。
「お客様は神様です」なんて精神でやってたら、この仕事は絶対に続かない。
俺たちの仕事は、生徒に道を示すことだ。
そのためには、ときに厳しいことも言わなきゃいけない。
それは生徒に対しても、保護者に対しても同じだ。
生徒には――
「お前、もっと一生懸命やれよ」と発破をかける。
保護者には――
「ちょっと過保護じゃないですか? 本人に任せましょう」と言うこともある。
これ、レストランだったら即クレーム案件だ。
「もっと一生懸命に味わって食べろ!」とか、
「あんた肥満だから、それ以上食べるな!」なんて言うレストラン、三日で潰れる。笑
だから俺らがやってるのは、ちょっと変わったサービス業なんだ。
普通とは違う。
それを理解したうえで、俺たちは“先生”という生き物をやっている。
そして俺が思うに――
先生という生き物は、「一生懸命」を応援したい生き物だ。
一生懸命に頑張るやつを見たら、放っておけない。
夜遅くまで残ってる生徒を見たら、帰り際に
「もうちょっとやるか?」なんて言ってしまう。
そんな生き物だ。
逆に、まだ本気になりきれない生徒には、
“本気になれるチャンス”を常に撒き続けたいと思っている。
けど、「一生懸命になれ!」ってのは強制できるもんじゃない。
そのスイッチを押すのは、本人しかいない。
だから俺たち先生ができることは、こうだ。
まだ本気になれてない生徒には、チャンスの種をばら撒く。
本気でぶつかってくる生徒には、月謝以上の全力を返す。
それが、俺たちがやってる“サービス業”――いや、“教育業”だと思う。
俺たちは、笑いながら、怒りながら、励ましながら、
生徒たちの「一生懸命」を全力で応援する。
それが、先生という生き物なんだ。




