小4の杉山少年は、ひとことで言えば、
クソ悪ガキだった。
「“ちょいワル”?」
ちがう。“ちょい”どころじゃない。
フルスロットルで悪ガキ。
ランドセルに入っていたのは、
教科書よりも悪知恵。
先生の話は“右耳から入って、そのまま天に昇天”。
後ろの席のやつの筆箱は“俺の私物”と勘違い。
そんな杉山少年には、数々のやらかしエピソードがあるのだが、
今日はその中でも一番情けなくて、一番大切な話をしよう。
あれはたしか、
教室の空気がまだ初夏の匂いをまとっていた頃。
俺は、やった。
友達を傷つけた。
もちろん、わざとじゃない。
でも、やっちまったことに変わりはない。
先生に呼び出され、こう言われた。
「杉山、お前がやったんだな?」
あの瞬間、俺の中の“守護霊:逃げ腰太郎”がフル覚醒した。
そして、俺は言ってしまった。
「……違います。〇〇くんに、やれって言われたんです」
うん、言ったね。
あの瞬間、友情をATMで下ろして焼却炉にぶち込んだ。
本当は、俺だった。
指示なんかされてない。
俺が、勝手に、やった。
でも、逃れたかった。
怒られるのが、怖かった。
その場から、消えたかった。
これが、“あの頃の俺”の正体だ。
当然のように、
俺は、相当な数の友達を失った。
無視された。
目も合わせてもらえなかった。
笑い声の輪の外で、独りぼっちになった。
でも、俺は思ったんだ。
「しょうがない。だって俺が悪い」って。
そこから俺は変わった――いや、変わろうとした。
「俺は、もう二度と友達を裏切らない」
そう心に決めた。
誰かのせいにしない。
責任から逃げない。
そしてなにより、自分の“ダサさ”を見失わない。
そのとき決めたことは、
いまでも、俺の人生の土台になっている。
裏切らないって、地味だし、しんどいよ?
でもさ、
“自分が自分の味方でいられる”って、人生でいちばんのご褒美だ。
だから、いま誰かを裏切ろうとしてる君に、あえて言いたい。
やめとけ。
未来の自分にぶん殴られるぞ。
そして、もし昔の俺みたいに、
大切なものを失ってしまった君がいたら。
大丈夫。
やり直せる。
俺だって、やり直した。
そのために、まずは自分と向き合えばいい。
ではまた、杉山少年の思い出3で。(トイレが関係する話だ、いつ公開するかは俺もわからない。)