小5、小6。
俺は、サッカーに命をかけていた。
サッカーボールが友達…
目指すは――全国大会。
そして、行った。
本当に、全国大会に行ったんだ。
サッカーでベスト16。フットサルでベスト8。
…だけど、ここからが本題。
そのサッカー全国大会ベスト16。
終わったのは、
俺のクリアミスからだった。
どフリーからのクリア。相手へのパス。
「え、これで全国大会終わるの?」ってくらいの凡ミス。
ボールは相手の足元へ。
ズドン。失点。
ズドン。俺の心にも失点。
で、フットサルのベスト8。
こっちは、俺ベンチ。
つまり出てすらいない。
ということでまとめると――
俺が出てると負け、出てないと勝つ。
このあたりでお気づきの方もいるかもしれないが、
俺がすごかったんじゃない。
チームメイトがすごかったんだ。
たった18人のチームから、3人がプロサッカー選手になった。
漫画かよ。
でもな、
そんな中で、運動神経Cマイナスの俺も、
レギュラーに食い込んだんだよ。
毎日毎日、食らいついた。
あのキラキラした天才たちの背中に、爪を立てるようにして。
(で、全国大会は俺のミスで終わるんだけどな)
中学に上がるとき。
「このまま続けるのか?」って自分に聞いた。
でも俺は、あっさり辞めた。
今でも不思議だ。
あんなに夢中だったのに。
理由はふたつ。
ひとつ。
上には上がいるってことを知ったから。
もうひとつ。
担任の上北先生の一言。
「毎年、東大に入る人数と、
サッカー選手になる人数、どっちが多いと思う?」
答え:東大の方が100倍多い。
その瞬間、
俺の中で“蹴る”から“書く”に、武器が変わった。
俺は決めた。
「勉強で、全国大会に行こう。」
そうして俺は、
奈良で一番大手の学習塾の門を叩いた。
サッカーをやめて、ペンを持った。
これが、杉山少年の“人生を変えたパス回し”である。
次回、「杉山少年の思い出4」に続く(かもしれない)。